第2部 5つの力編 信頼結婚の教科書|2-2

②深掘る力 … 関心を向けて、奥まで降りる

会う準備が整ったら、次は会話です。5つの力の2番目、深掘る力をお伝えします。「何を話せばいいかわからない」という方と、「なんか違う」で切ってしまいやすい方、どちらにも読んでほしい章です。相手に関心を向けて聞くことと、表面で切らずに奥まで降りること。このふたつは、じつは同じひとつの力なんです。

「何を話せばいいか、わからない」

🤔「お見合いで会話が続かなくて、沈黙が怖いんです」

🤔「初対面の方と、何を話せばいいかわかりません」

婚活のご相談で、いちばんよく聞くお悩みのひとつです。そして多くの方が、面白い話題を用意したり、話し上手になろうと頑張ったりします。

でも、最初に磨いてほしいのは「話す力」ではありません。信頼関係は、上手に話すことからではなく、相手に関心を向けて聞くことから始まります。

会話が続かないのは、話が下手だからではありません

沈黙が怖いとき、頭の中はどうなっているでしょうか。「次に何を話そう」「変な人だと思われていないかな」。意識が全部、自分に向いているんです。自分に矢印が向いている間は、目の前の相手のことが見えなくなります。

深掘る力の最初の一歩は、この矢印を相手に向けることです。「この人は、どんな人なんだろう」「何を大事にして生きてきたんだろう」。関心が相手に向いた瞬間、質問は自然に生まれてきます。会話が続かない本当の原因は、話す技術ではなく、関心の向きだったんです。

興味は「技術」として持てるようになります

🤔「でも、好きでもない相手に、興味なんて持てなくて…」

そう感じる方も多いと思います。ここで大事なことをお伝えします。興味は、感情ではなく技術です。

湧いてくるのを待つものではなく、質問して、知って、初めて湧いてくるものなんです。人はだれでも、その人にしかない経験と物語を持っています。知らないから、興味が持てない。知れば、面白くなってくる。1-2でお伝えした「仲良くなるから、いいなと思える」と同じで、ここでも順番が逆なんです。

「話題泥棒」に気をつけて、話題を変える前に「あと一問」

聞いているつもりで、やってしまいがちなことがあります。相手の話を、自分の話にすり替えてしまうことです。

😊「先月、京都に行ったんです」

「京都いいですよね!私も去年行って、それでね…」

共通点を見つけて嬉しくなる気持ちは、とても自然なものです。でも、ここで自分の話を始めてしまうと、盛り上がった気がしているのは話した側だけになります。相手は、自分の話を最後まで聞いてもらえなかったことを、ちゃんと覚えているんです。思い当たる方は、安心してください。悪気がないからこそ起きる、ただのクセです。気づけば、直せます。

代わりにやってほしいのが、話題を変える前に、あと一問だけ聞いてみることです。「京都に行ったんです」に対して「いいですね。ところでお仕事は…」と話題を横に滑らせるのではなく、「京都で、どこがいちばん良かったですか?」と一歩だけ深く降りてみます。すると、その人がなぜそこに惹かれたのか、何を大事にしている人なのかが、少しずつ見えてきます。会話は、広げるものではなく、深めるものです。

「なんか違う」で終わっていませんか

🤔「いい人なんですけど、なんか違う気がして…」

会話ができるようになると、次に出てくるのがこの壁です。お見合いや初デートのあと、こう言ってお断りする方は本当に多いんです。会話はした。感じも悪くなかった。でも、なんか違う。ここからは、その「なんか違う」の正体を一緒に見にいきます。

たとえば、初デートの会計で割り勘にされたとします。「この人、ケチかもしれない」。返信が短ければ「私に興味がないのかな」。転職が多いと聞けば「飽きっぽい人なのかな」。私たちは、たったひとつの行動から、その人がどんな人かを30秒で決めてしまいます。これは冷たい人だけがやることではなく、人間の脳のしくみです。人はいいことより悪いことを先に、強く見るようにできています。だから、あなたが悪いわけではありません。

でも、思い出してみてほしいんです。あなた自身も、行動ひとつで誤解されたことはありませんか。「本当の私は、そうじゃないのに」と悔しくなった経験です。それと同じことを、私たちも相手にしているんです。

「もったいないすれ違い」が起きています

割り勘の場面を、両側から見てみます。

割り勘にした側には、その人なりの理由があります。対等な関係でいたいと考えた人もいれば、過去の経験から慎重になっている人もいます。一方、割り勘にされた側のモヤモヤの奥には「大事にされていると感じたい」という願いがあります。

ところが、お互いに行動の表面しか見ないとどうなるか。片方は「ケチな人」、もう片方は「お金にがめつい人」という印象のまま、終わります。どちらも本当の姿ではないのに、そこで関係が終わってしまう。私はこれをもったいないすれ違いと呼んでいます。

モヤっとは、切るサインじゃなく、掘るサイン

深掘る力とは、相手に関心を向けて聞き、行動の裏にある価値観と、その価値観を作った出来事まで降りていく力です。

行動の表面で「合わない」と決めるのではなく、一段ずつ降りてみます。この人はなぜそうしたんだろう(価値観)。その考え方は、どんな経験から生まれたんだろう(出来事)。行動の奥には、必ずその人の物語があります。

だから、お相手にモヤっとした瞬間は、関係を切るサインではありません。そこにその人の物語が埋まっているという、掘るサインなんです。

「もしかして」を3つ考えて、本人に聞いてみる

やり方は、シンプルです。

まず、事実と解釈を分けます。「割り勘にされた」が事実で、「ケチだ」は解釈です。頭に最初に浮かぶ解釈は、たいてい悪いほうに偏っているので、いったん脇に置きます。

次に、「もしかして」で仮説を3つ考えてみます。もしかして、対等でいたかったのかな。もしかして、緊張して余裕がなかったのかな。もしかして、何か考えがあるのかな。3つ考えるうちに、決めつけがゆるんでいきます。

そして、いちばん大事なのは、仮説のままで終わらせないことです。本人に聞いて確かめます。「どうしてそうしようと思ったの?」と、責めるためではなく、知りたいから聞く。これは尋問ではなく、相手の世界への関心です。「あと一問」の深い版だと思ってください。聞いてみると、想像もしなかった物語が出てくることが、本当に多いんです。

深掘る力は、自分にも使えます

5つの力の中で、深掘る力だけは、相手だけでなく自分にも向けられる力です。

お相手にモヤっとしたとき、自分の心も掘ってみます。私はなぜモヤっとしたんだろう。奢ってほしかったから…いえ、もっと奥があります。「大事にされていると感じたかった」。ここまで降りると、欲しかったのはお金ではなく、大事にされている実感だったとわかります。

この、モヤっとの奥で見つかる本当の願いは、第1部でお伝えした「どうありたいか」につながる大事な材料になります。そして、見つけた願いをお相手にどう渡すかは、④伝える力の章でお伝えします。

解像度が上がると、会うのが面白くなります

人は、自分の話を興味を持って聞いてもらえると、安心します。「この人は、私を否定しないでいてくれる」と感じられると、心が開きます。そして不思議なことに、聞いてもらえた人は、今度は相手のことを聞きたくなるんです。聞いてもらう→安心する→相手に興味が湧く→今度は自分が聞きたくなる。この循環が回り始めた状態が、信頼が積み上がっていく状態です。

私はお見合いを、こんなふうに考えています。世の中には見たこともないいろんなポケモンが存在していて、それぞれに特技や願いやストーリーを持って、今も人生を一生懸命生きています。そのポケモンの人生と私の人生が1時間だけ交差している、貴重な時間がお見合いです。解像度の高い、詳しいポケモン図鑑を作って、最終的にいちばんお気に入りの1匹と冒険に出たい。そう思ったら、お相手に興味が湧いてきませんか。

解像度が上がると、切る理由が減ります。それだけではなく、人に会うこと自体が、だんだん面白くなってくるんです。興味を持って相手の話を聞くことは、「あなたに関心があります」という、会ったその日から渡せる贈り物です。特別な話術はいりません。深掘る力は、最初からできる愛情表現なんです。

この章のまとめ

  • 信頼関係は、上手に話すことからではなく、相手に関心を向けて聞くことから始まります
  • 会話が続かない本当の原因は、意識が自分に向いていることです。矢印を相手に向けます
  • 興味は感情ではなく技術です。質問して、知るから、面白くなってきます
  • 「話題泥棒」に気をつけて、話題を変える前に、あと一問。会話は広げるより、深めるものです
  • 私たちは行動ひとつで相手を決めてしまいます。モヤっとは、切るサインではなく、掘るサインです
  • 事実と解釈を分けて、「もしかして」を3つ。そして本人に聞いて確かめます
  • 自分のモヤっとを掘ると「本当の願い」が見つかります。それは④伝える力で渡す材料になります
  • 解像度が上がると、切る理由が減って、人に会うのが面白くなります

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